トルコが主な政策金利を24%から19.75%に引き下げることを決めました。
今回はこのニュースをわかりやすく解説して行きたいと思います。
まずはトルコの場所を確認しましょう。
トルコは日本の約2倍の面積を持ち、8200万人ほどの人口がおります。首都はアンカラといい、イスラム教をほとんどの方が崇拝しています。
アメリカとトルコは昔からそれほど悪い関係ではありませんでした。両国の関係が悪くなってきたのはアメリカがオバマ大統領だった時です。
トルコには約1000万人の「クルド人」という方達が住んでいます。(ちなみに日本にも600人ほどが住んでいます。)
クルド人は別名、悲劇の民とも呼び、国を持っていない人達です。
イラン・イラク・トルコ・シリアにまたがって暮らしており、イラクではクルド人自治区と言って高い塀でクルド人が暮らしている地域を囲ってあります。
どうしてこんな事になったかといいますと、昔この辺りはオスマン帝国と言う国があったのです。しかし第一次世界大戦でオスマン帝国は敗北します。
そして第一次世界大戦に勝利した連合国(アメリカなど)とオスマン帝国との間で「セーブル条約」が結ばれました。
これはオスマン帝国にとっては不条理な条約でしたが、オスマン帝国に支配されていたクルド人にとっては将来は独立が認められた条約だったのです。
セーブル条約によって国境線が引かれ、今のように国が分かれました。
クルド人も独立できると信じていました。
ところがその後、トルコ共和国の建国者であるケマル・アタチュルクによって条約が破棄され、新しくローザンヌ条約が結ばれます。
この条約はクルド人の独立については何も書かれておりませんでした。
だから、国境線が勝手に引かれている中に今のようにクルド人が取り残されてしまったわけです。
トルコではクルド人を非常に不安視しています。
というのは、トルコに居住しているクルド人が独立に成功した場合、トルコ領土に国境線が引かれてクルド人の国が出来てしまう可能性があるからです。
トルコにとっては領土を奪われる形となります。
だからトルコ政府はクルド人を認めないですし、昔からクルド語や民族衣装さえも禁止したりと弾圧をして来ました。
アメリカとトルコに亀裂が入ったのは、トルコにある隣の国、シリアに対するアメリカの対応でした。
アメリカとトルコはシリアのアサド政権(アサド大統領率いる政府軍)を敵対視していました。
その後、シリアのアサド政権がシリア国内の内戦で化学兵器を使用した事が2012年7月に取りざたされました。
化学兵器の使用は国際法で禁止されています。
アメリカは最初、化学兵器を使用したらシリアに介入する予定だったんですが、結局はアサド政権に対して何も制裁を行いませんでした。
トルコは「なんでアメリカは何もしないんだ!」と怒ったのですが、無視されます。
次に起こったのがIS(イスラーム国という厳格なイスラム教を守る過激派組織)との戦いです。
ISは中東に侵略をして広がっていったのですが、国際社会がこれに対して意を唱えて、多くの国が参加してISの掃討を行いました。
アメリカはこの時にクルド人兵士を積極的に支援してISと戦いました。
クルド人も侵略してくるISを敵視していたからです。
これに対してトルコはあまりよく思いませんでした。何故ならこのクルド人部隊にはPKKというクルディスタン労働党が関わっていたからです。
PKKはクルド人の独立国家建設を目指す武装組織でして、トルコとPKKは30年以上も抗争をしていたからです。(アメリカもPKKはテロ組織と見ていますが、PKKは関わっていないと否定しています。)
こうしてオバマ政権時にトルコとアメリカで亀裂が入ってしまったのです。
トランプ政権下に入りますと、ある事件が起きてしまいます。
トルコでアメリカ人牧師がスパイ容疑で拘束されてしまったのです。
この事にトランプ大統領は直ちに釈放するようにトルコに要求したのですが、トルコ側はこれを拒否しました。
この牧師は保守系キリスト教の福音派の人です。福音派とはキリストの教えを忠実に守る宗派の方達です。
アメリカでは宗教別に分けると4分の1がこの福音派です。そしてトランプ大統領の強力な支持基盤で2016年の大統領選で白人の8割の福音派がトランプ大統領に投票したと言われています。
福音派の支持を得て置くためにもトランプ大統領は牧師ひとりの拘束に対してトルコに経済制裁を加える事を決めました。
(経済制裁とは輸出入を禁止したりして経済的においつめる政策です。)
両国はこれで完全に関係が悪化してしまったのです。
さて、トルコ国内では経済制裁の前から実は深刻なインフレとなっていました。
インフレとは物の価値が上がって、お金の価値が下がる事です。100円のリンゴだったのが500円となったりしちゃう事ですね。
トルコのエルドアン大統領は国内がインフレになっているのにもかかわらず、対策を行いませんでした。
これを見た投資家が、トルコリラを持っていても意味がないと判断してみんな売ってしまったのです。
たくさんの投資家がトルコリラを手放すと国内には大量にトルコリラが溢れてしまいます。
モノがたくさんあれば価値は下がります。
ダイヤモンドもその辺に転がっている状態になれば価値はないですよね?
お金も同じで市場にたくさんあるという事は、お金の価値が下がるので、さらにインフレが加速してしまうのです。
こうしてトルコ国内の経済とアメリカの経済制裁が重なってトルコリラが急落し、インフレがさらに拡大してしまったのです。
インフレになると一般的に金利を引き上げる政策をします。
金利を引き上げると家などを購入する際に高い金利がついてしまいますが、銀行に預けますと今までより金利が沢山付きます。
そうなると国民が銀行に預け出しますから、市場からお金が無くなっていきますよね。
こうやって国内のお金のバランスを取っていくわけです。
トルコは一度17.75%の金利を24%に引き上げましたが、インフレも落ち着きだしたので、19.75%に引き下げることを決めたのです。
これが今回のニュースですね。
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2019/07/31(水) | 国際事情のお話 | トラックバック(0) | コメント(2)