大手の製薬会社で経営環境が悪化して早期退職者の募集を募っています。
今回はこのニュースをわかりやすく解説して行きたいと思います。
新薬の開発には長い年月と開発費がかかります。
一つの薬を作るには、大体短くて10年弱〜長くて15年くらいかかったりします。
この新薬が作られるまでの工程はこんな感じです。
●研究 2〜3年
自然界にある動物や植物、無機物などから素材を抽出して薬の化合物を作って、それがどの様な可能性のある薬か研究をします。
●非臨床試験 3〜5年
マウスなどの動物や細胞を使って、薬の有効性や安全性について実験を行います。
●臨床試験 3〜7年
同意を得た健康体の方や何かしらの病気になっている患者さんで薬を試す実験を行います。
●申請と認可 1〜2年
厚生労働省に薬の承認を受けるための申請を行います。厚生労働省で医薬品医療機器総合機構に審査を依頼してパスされますと、審議がされて最終的に厚生労働省の大臣が許可を出します。
そして、これらの工程での開発費はなんと200〜300億円もかかります。
このような長い年月と開発費がかかりますので、簡単にマネされない様に新薬は特許権を出願して守る様にしています。
特許権を取得すれば20年間は勝手にマネされて販売される事もありませんし、新薬を開発した会社は独占販売をする事ができます。
ただし20年間とは書きましたが、通常は治験(臨床試験)を行う前の段階で特許の出願をしますので、実際は市場に販売されて5〜10年たらずしか特許の有効性がないのです。
ですから先程もお話しした通り、新薬には多大な開発費がかかりますので、販売しても回収ができないという事で途中で開発を中止する新薬も珍しくありません。
そこで新薬開発会社は長く独占して販売しするために、薬そのものに特許をかけるだけでなく、製法や調剤などにも特許をかけたりしています。
こうしていろいろな所で時期をずらして特許を取得しちゃえば、長く販売できます。
しかしいつかは特許の期間が終了します。
特許の期間が終了しますと、その薬を模倣して薬を作る事ができるようになります。
それが『ジェネリック医薬品』と呼ばれているものですね。
ジェネリック医薬品は新薬と同じにしなくてはいけない所もありますし、同じにしなくてもよい部分があります。
◼︎同じにしなくちゃいけない所
・効能や効果
・用法や容量
・成分や量
◼︎同じじゃなくて良い所
・薬の色
・薬の味
・薬の形
・薬への添加物
こうして見てみますと新薬とはほぼ違いがありませんよね。新薬のモデルに沿って作られているわけですから。
その為、ジェネリック医薬品は新薬ですでに有効性や安全性が確認された有効成分を使って開発されているので開発期間が3~5年と短いです。
また開発費も数億円程度です。従って新薬よりも安い値段で消費者に提供できるわけです。
現在はこのジェネリック医薬品が普及してきています。
当然、消費者が安い薬を求めているのもそうですが、それよりも国がジェネリック医薬品を進めているからです。
国民医療費の薬剤費を減らして財政負担を減らしたいからですね。
現在、国の医療費は1年間で40兆円を超えていて、そのうち薬剤費は8兆円を超えています。
私達が払う医療費は基本的に3割です。
しかしさらに日本には高額医療費制度という素晴らしくとも国の医療費を圧迫するシステムがあります。
高額医療費制度では、1000万とかの高額な医療費がかかる場合は3割負担とはなりません。
高額医療費制度によって病気になった人の医療費や薬は、国(私達の税金)でさらに負担してくれるのです。
例えば一月に300万円もかかる様な治療でも1万5000円とかで済んだりしてしまいます。(年齢などによって負担料は変わります。)
病気になってしまった方にとっては嬉しい事ですが、残念ながら医療費の逼迫(ひっぱく)によって国の財政が極めて厳しい事になってしまっています。
皆さんが誰もが加入している、国民皆保険制度もこのままだと破綻するとも言われていますね。
そう言った事もあり国としてはジェネリック医薬品を使うように進めたりするわけです。
ただ、こうなってしまうと新薬を開発する企業にとっては売り上げを伸ばす事もできませんし、収益の悪化につながります。
そして、現在の大手製薬会社でコストを減らす為に早期退職者を募ったり、事業の立て直しをしているのです。
これが今回のニュースですね。
▼大佐のブログが本になりました。

自己紹介
ブログ管理人:大佐

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2018/07/17(火) | 時事のお話 | トラックバック(0) | コメント(0)