農林水産省が2019年度のバター輸入枠を2018年度に比べて50%増やす方針を固めました。
今回は何でバター不足が起こっているのか?を分かりやすく解説しながら、このニュースを紐解いて行きたいと思います。
皆さんも報道でよく「バター不足」という言葉を目にするかと思います。
店頭に行きますと、バター不足となっている期間は確かにバターが売り切れたりしています。
しかし、店頭には牛乳が何故か普通に置いてあります。バターは牛乳から作られるのに何で・・?と、思う方もいらっしゃたんじゃないかと思います。
バターの需要が一番多くなるのはクリスマスシーズンとバレンタインデーです。
ケーキやチョコレートと言ったお菓子を作るために需要が増えるのです。
そして、牛乳など飲料向けの物は夏に需要が増えます。
しかしながら日本の酪農家は年々減っています。
平成26年度では18600戸あったものが、29年度では16400戸と減っています。
これは後継者がいなかったり、高齢化で酪農を辞めてしまう方、エサ代が高くて辞めてしまう方が増えているからです。
「あ、だから牛の数が減っていて、これによって牛乳の生産量が下がってるのかー。」・・と単純な理由ではありません。
確かに牛の数も減って、酪農家の数も減ってはいるんですが、一戸あたりの牛を飼う数を増やしてるので、店舗から牛乳が消えるまで減ってるわけではないからです。
先程も言いましたがバター不足報道はしていても牛乳が不足してる報道はたぶんあまり見かけていないですよね?
それは牛乳やバターなどが非常に特殊な製品であるとともに、乳業の構造も特徴的だからなのです。
酪農家のほとんどは農協などの組合に属しています。農協はさらに都道府県単位で農協連合会と言う組織を作っています。
さらに農協連合会は全国で10個のグループ組織を作っているんですが、農林水産大臣からここを「指定生乳生産者団体」という法的な指定団体にしているのです。
指定生乳生産者団体に指定されますと、その配下にある農協などに所属してる酪農家は補助金などの援助を受けることができます。
が、酪農家さんは単純に補助金目当てで組合に入ってるわけではありません。
搾った生乳(せいにゅう)を迅速に配送してくれますし、出荷を受け入れてもらえる事ができるからです。
生乳は野菜や果物と違って、すぐに痛んでしまうので長期間の保存ができません。
集荷配送を短時間で済ませられなければ衛生管理が保てないですし、出荷した生乳を安定して受け入れてくれる組合の力がいるのです。
各農家さんから出荷された生乳はいったん大きなタンクに貯められます。
集められた生乳の殆どは飲料向けとなりますが、飲料向けと加工用向け(バターとかチーズとか)の用途別に分けられます。
生乳はまず優先されて飲料向けにされます。
飲料向けの需要がやはり高いですし、生乳も痛みやすいのでこのようにしているのです。
そして次に痛みやすい生クリームが優先して作られ、その次にチーズという順に加工用として生乳が回されます。
バターはと言うと一番最後に回されます。
何故ならバターは痛みにくい製品だからです。
この構造を理解してる上で、もしも酪農家さんが儲けようとして生乳を大量に出荷した場合どうなるでしょう?
大量にモノがあればスーパーでの価格が当然下がってしまいますから、生乳の利益率も酪農家さんは減ってしまいます。
また牛乳とかってスーパーで例え50円で売ってたとしても、すぐに痛んでしまいますから大量に買い込む事もできませんよね。
こうなってしまうと飲料向けの生乳が巷に余ってしまい、結局廃棄することになってしまいます。
加工用に回せばいいじゃないかと思うかもしれませんが、残念ながらそうはいきません。
実は飲料向けは1キロ115円ほどで、加工用向けは飲料向けより安くて35円くらいで取引がされています。
農家さんは飲料向け、加工用向けどちらに使ってもらえるかは選べないようになっています。
加工用に使われた場合は、安く取引されてしまうので農家さんは損をしてしまいます。ですから農家さんにとっては出来る限り飲料向けに使用してもらう事が望ましいのです。
※加工用向けは組合に加入していれば国から少しだけ補給金と言う形でお金が補填されて支払われますが、やはり飲料向けの方が断然利益率は高いです。
つまり、生乳の作り過ぎは私達消費者にとっては良いかもしれませんが、そのぶん裏では余ったものを廃棄したり酪農家さんの利益も出ないので得しないのです。
だから作る側も調整して余らないようにバランスを保ってギリギリのラインで作っているわけです。
(どのくらい出荷したらベストかは今までのデーターから予想を立てています。)
所が、夏場に異常に暑くなったりしますと牛がバテて乳の出が悪くなったり、台風などで酪農産地が被害を受けますと、生乳の出荷量が下がってしまい、今までギリギリのラインで作られていたバランスが崩れてしまいます。
優先して飲料向けに作られているわけですから、最後に作られるバターは調整されて不足してしまう事態となってしまうわけです。
が、こう度々バター不足となってしまうと、バターはないわ、価格は高くなるわで消費者も大変です。
そこで農林水産業が2019年度のバター輸入枠を2018年に比べて50%増やす事にしました。
量としては2万トンくらいです。
輸入する量は毎年1月に決めて、調整しながら輸入量を毎年変えて行く方針です。
これが今回のニュースですね。
▼大佐のブログが本になりました。

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ブログ管理人:大佐

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2019/02/04(月) | 時事のお話 | トラックバック(0) | コメント(0)