6月20日、ロシアの爆撃機が沖縄県・南大東島と東京都・八丈島付近で領空侵犯したという報道がされています。
今回はこのニュースをわかりやすく解説して行きたいと思います。
まずは領空の定義について解説していきましょう。
領空は領海と同じく、陸地から12海里(22キロ)離れた地点としています。
領空内では勝手に他国の軍用機が飛ぶ事ができないようになっています。
民間機の場合は前もって航空協定が結ばれていて、フライトプランが提出されていれば、飛行可能です。
高さはというと、これは明確に定義がされていませんが、大気圏内(地球の気体が存在している範囲。一般的には100キロ以下ですが、国によってバラバラです。)までとしています。
何故なら人工衛星や宇宙ステーションやらが地球の上を飛んでいますから、宇宙まで定義が定められてしまうと、通る際にいちいち許可を取らなくてはいけなくなるからです。
また領空とは別にさらに「防空識別圏」というものが設定してあります。
防空識別圏は1945年にGHQが制定した空域をほぼそのまま使用しています。
これは何の為にあるのかというと、軍用機が領海に侵入する前に、「このまま行くと領空に入ってしまいますよ」と警告を与える為です。
マッハ3とかで飛ぶような戦闘機が領空に侵入すると、数分で国土に入ってしまいますから、前もってこのようなエリアを作っているわけです。
この防空識別圏は国によって独自に設定しています。というのは、国際法上で防空識別圏の規定を決めていないからです。
防空識別圏に事前の許可がないまま侵入しますと、領空侵犯の恐れがあると見なして、陸上自衛隊の戦闘機が緊急発進します。
いわゆる「スクランブル発進」とニュースでよくいうやつです。scrambleとは急いでパニックになりながら慌てて動くという意味です。
スクランブル発進後に、日本の対応としましては、対象機の近くに行き領空侵犯の恐れがある事を無線で呼びかけます。
しかしこれを無視するような場合は対象機の前に飛び、機銃を一定期間撃ちます。(前に飛べば絶対に対象機に当たる事はないので、このように警告射撃を行います。)
また機銃は曳光弾(えいこうだん)を使用します。
曳光弾は弾が光り、弾道が見える為、警告射撃をしている事が相手に分かります。
このスクランブル発進ですが、年に何回ぐらいしてると思いますか?
はい、例えばですが平成29年4月から平成30年3月までの1年間で言うと904回です。
たぶんめっちゃ多いと思ったはずです。
これでも減った方です。
さぞかし警告射撃をしたかと思うかもしれませんが、実は今までで1回ぐらいです。警告射撃は余程の悪質な場合でない限りは行いません。
やはり機銃を撃ってしまうと外交問題が少なからず起こってしまうからです。
また戦闘機や小型機に対してスクランブルすることは、実はあまり多くなく、爆撃機か情報収集機がその大多数を占めます。
もし仮に攻撃をされた場合は日本側は撃墜行動を取りますが、極めて微妙な判断が入りますし、今後も多分ないと思います。
さて、防空識別圏に侵入してくる軍用機は主に中国とロシアですね。
大体ですが中国が6割、ロシアが4割くらいです。
一体、彼らは何の為に侵入してくるのでしょうか?
・政治的圧力・・ここは俺たちの国の領域だよ!と圧力をかけます。特に尖閣諸島付近に多いですね。
日本だけでなく、アメリカに圧力をかける意味もあったりします。
・訓練・・軍事訓練によって防空識別圏などに侵入します。
・あえて軍用機を飛ばして情報収集する・・これは相手の軍用機にレーダーを飛ばし、その相手から返ってくる電波を受信して解析する諜報活動をおこなっています。「シギント」なんて言います。
このような防空識別圏への侵入は、しかしながら先程申しました通り国際的な規約はないので全て合法なのです。
今回はロシアの爆撃機(TU95)が沖縄県・南大東島と東京都・八丈島付近で防空識別圏を超えて領空侵犯を行ないました。
もちろん日本側はスクランブル発進をして、無線で警告し、日本はこの事に対して遺憾の意をロシアに示しました。
これが今回のニュースですね。
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2019/06/24(月) | 時事のお話 | トラックバック(0) | コメント(0)