イエメンの内戦で両軍の戦闘に子どもたちが参加していることが、人権団体の報告で明らかになりました。
今回はイエメンの内戦についてわかりやすく解説して行きたいと思います。
中東のイエメン共和国はこの様な場所にあります。
サウジアラビアの下にあり、人口は2892万人ほど、首都はサヌアと言います。石油や天然ガスが資源としてありますが、治安も悪く最貧国の一つでもあります。
イエメン共和国は1990年になるまで南北が分断されていた国というのはあまり知られていないかもしれません。
昔、イエメンはオスマントルコという大国の勢力下に置かれました。ただ、オスマントルコからイエメンまでは距離があったので、イエメンの首長が普通に自治を務めていました。
イエメンの目の前にある湾から上流に遡っていきますと、スエズ運河に当たります。
昔はスエズ運河なんてなかったのですが、船で物を運ぶ際に非常に遠回りになってしまうので、人工的に運河を作ってしまったのです。
しかしながらスエズ運河を作っても、その他の航路に海賊がいたり治安が悪ければ船は安心して通れません。近くに港もあれば便利です。
そこでイギリスがイエメンにあった港町、アデンを占領してしまいます。イギリスはその後、有力な人達を引き
入れて、イエメンの南側を保護領にしてしまいました。
保護領とは内政は干渉しないけれども外交権だけは奪われた領土をいいます。外交権は国と国の間で交渉する権利ですね。
こうして、北はオスマントルコ(トルコ領)、南はイギリスの領土というように南北に別れてしまったわけです。
第一次世界大戦が終わると、北イエメンはムタワッキリ王国という名前で独立し、南イエメンにいるイギリスを追い出す為に、アラブ連合共和国(エジプトとシリアが合体して作られた国)に加わります。
所がエジプト人を受け入れるとエジプトの政治や思想に賛同するイエメン人が増えてクーデターが起こってしまいました。
そして北イエメンはエジプトの衛星国(内政や外交が、ある国に支配された状態の国)となってしまったのです。
しかし、1970年に入ると中東戦争が起こり、エジプトは「こんな事してる場合じゃないや」となり、北イエメンから出て行ってしまうのです。
南イエメンもやがてイギリスから独立し、北イエメンと南イエメンが対立する意味もなくなってしまいました。
そして北イエメンの方が人口・経済力もある本家だった為、北イエメンに吸収される形で1990年に南北が統一されたのです。
南北が統一した事でイエメンは新政府を作りました。しかしながら根本的な問題が起こります。
資本主義で近代的なイギリスに支配されていた南イエメンは、やはり現代的な思想を持っていましたが、北イエメンは保守的で厳格なイスラム教を信じる人達が多かったのです。
北イエメンに吸収された形となったこともあり、結局は北イエメン寄りの政府が作られたので南イエメン側は不満が高まっていきました。
さて、南北統一後にイエメンの大統領となったのが、北イエメン出身のサレハさんでした。
そして副大統領となったのが南イエメン出身のハディさんです。
サレハ大統領は軍事独裁政権を行なっていたのですが、2011年に大事件が起こります。
「アラブの春」です。
中東全土に独裁者を倒して民主化(国民が主体となる政治)を進めるクーデターが起きたのです。
これによりサレハ大統領は辞任。
そしてハディさんが大統領となりました。
これで終わりと思いきやまだまだ続きます。
2015年になると、北イエメンにいる「フーシ派」と呼ばれる武装組織がクーデターを起こしました。
フーシ派とはシーア派という宗教から枝分かれしたような宗派です。
ハディ大統領は「スンニ派」と呼ばれる宗派です。
●シーア派・・ムハンマド(イスラム教の開祖)の正当な子孫のみを正当な後継者とする。伝統的な宗教を厳格に守る
●スンニ派・・必ずしも血縁のある者が後継者ではないと唱える。シーア派よりはおおらかに宗教を守る
シーア派はスンニ派を当然認めないので、クーデターが起こったんですね。
ハディ大統領はこのクーデターで軟禁状態となり辞職してしまい、このフーシ派(シーア派)武装組織が政権を掌握してしまったのです。
その後、
ハディ大統領は軟禁状態から抜け出して、大統領宣言し、ハディ大統領の政府軍とフーシ派武装組織で内戦となりました。
さらにはフーシ派にイランが付き、スンニ派にはサウジアラビアがつきました。
イランとサウジアラビアは仲が悪いので、代理戦争の様な形です。
これに加え、アルカイダという武装組織も入り、内戦が続いているのです。
この内戦に子供までもが銃を取って戦いをしており、人権保護団体がこの惨状を公表したのです。
これが今回のニュースですね。
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2019/07/19(金) | 宗教・戦争のお話 | トラックバック(0) | コメント(1)