中東レバノンでディアブ首相率いる政権が発足し、抗議デモが起こっています。今回はこのニュースをわかりやすく解説して行きたいと思います。
レバノン共和国は地中海やシリアに隣接した人口680万人ほどの小さな国です。
中東は砂漠と言うイメージですが、意外にも緑に囲まれており、中東のパリとも呼ばれています。
最近で言えば日産のゴーン氏が逃亡した国ですね。
レバノンはオスマン帝国に支配され、その後にドイツの植民地となり、その後にフランスの国連委任統治領となりました。
国連委任統治領とは、第一次世界対戦中に植民地にしていた国が敗戦した事により、その植民地だった場所を国連が依頼をして、依頼された国が統治する事です。
依頼されるのは戦勝国です。
統治と言っても同じように植民地化するのでなく独立するまで、サポートして行くと言ったのが趣旨です。
しかし、この時の背景では戦勝国同士が中東を「どうやって分けようか」と言う秘密裏に勝手な話し合いが行われていました。
当然、戦勝国同士の都合が良い形に中東をコントロールして支配して行きます。
フランスが委任統治した後にレバノンは第二次世界大戦中の1941年に独立をします。(正式に独立したのは1943年)
しかし、1975年から1990年にかけてレバノンでは内戦が始まってしまいます。
中東と言えばイスラム教ですが、レバノンはもともとキリスト教が多い国です。
と言うのは古代ギリシャやローマ帝国、オスマン帝国の影響、そしてフランスが委任統治していた事もあり、中東では珍しく国民の40%ほどがキリスト教信者です。
◾️キリスト教(マロン派・ギリシャ正教・カトリックなど)
◾️イスラム教(シーア派・スンニ派・ドルーズ派など)
(宗派や宗教の違いで18ほどあります)
内戦の根本的な原因はフランスにあると言われています。
レバノン共和国は実は今よりもう少し面積が小さい国でした。しかし戦勝国であるフランスがシリア領域の一部を含めて国境線を勝手に引いてしまいました。
以前のレバノンでは宗教・宗派がバランスを保っていたのですが、シリア領域を含めて国境線を引いたせいで、宗教・宗派のバランスが崩れてしまったのです。
これにより内戦が起こり、現在ももめているわけです。
では今のレバノンを見てみましょう。
今のレバノン首相はハッサン・ディアブさんです。
2020年1月20日に就任したばかりです。
ディアブ首相はイスラム教スンニ派の方です。
スンニ派とは予言者ムハンマドの後継者を血縁関係にこだわらず優秀な人が指導していくと言う考えです。
シーア派は血縁関係者が絶対に指導して行くと言う考えですね。
レバノンは政治的バランスを保つ為にかねてから大統領がキリスト教マロン派、首相がイスラム教スンニ派、国会議長がイスラム教シーア派から選ばれる形が定着しています。
今まで通り、首相がスンニ派ですが何故にレバノン国内で抗議デモが起きているのでしょうか?
ディアブ首相は前の首相よりスンニ派からの支持があまりない方でした。
そこでレバノン国内にいるシーア派のヒズボラ組織と政治的な同盟者の支持を集めて台頭したとされています。
ヒズボラとはシーア派のイスラム教原理主義(昔からの教えを厳格に守る人達)でアラビア語で「神の党」と呼んでいる政治・武装組織です。
つまりディアブ首相はスンニ派ではありけれど、シーア派寄りの首相なんです。
シーア派寄りであれば閣僚の人選もシーア派寄りになってしまうのは必然。これにスンニ派の国民は不信感を抱いていたのです。
さらにレバノンの経済にも問題があります。
レバノンの国内総生産(GDP 自国で生産して自国で消費する数値。国内の経済の指標を表します。)
に対して借金が完全に上回ってます。
ちなみに2019年は国内総生産(GDP)が550億ドルですが、借金は約150%の850億ドルに達していました。
ほとんどは借金返済と政治に使われて経済はガタガタです。
こう言う背景があり、不満のある国民がレバノンで大規模なデモを起こしているのです。
これが今回のニュースですね。
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ブログ管理人:大佐

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2020/01/29(水) | 宗教・戦争のお話 | トラックバック(0) | コメント(0)